追悼 渡瀬恒彦出演作品10選

渡瀬恒彦が亡くなった。
がん公表以降、覚悟していたとはいえ「渡瀬恒彦さん、死去」という文字を観て頭がクラっとした。

俺はどうしてこんなに渡瀬恒彦が好きなのかと考えた時、巷で言われているような狂犬ぶりとは別に、ある種のピュアさや“弟性”のようなものに惹かれたんだと思う。
チンピラとして暴れまくる姿は勿論強烈だし、その肉体性も相まって鮮烈な迫力を発揮する。
ただ、どんなに悪逆非道な事をしていても、その奥底には必ず少年ぽさや純粋さが底流していた。
強面の武闘派のようでいて、近所の気の良い兄ちゃんのような雰囲気もある。
喧嘩の強さとかスタント云々だとかは別にどうでもよくて、そういう二面的な特性に惹かれたのだ。

そこで、僭越ながら、渡瀬恒彦のそういう魅力が色濃く出ている作品はどれかと考えてみた。
助演・主演を問わず、作品の知名度や完成度も度外視して、とにかく渡瀬恒彦の魅力を基準に選んだ。
喧嘩最強伝説を語るのもいいけど、まずは出演している映画を観て、その演技を評価してほしい。

・第1位 『鉄砲玉の美学』(1973)

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この映画の渡瀬恒彦は自分を狂犬だと思ってるだけのウサギだし、流れる頭脳警察は“反骨の咆哮”ではなく“負け犬の遠吠え”でしかない。
『仁義なき戦い』が100人全員が面白いと感じる映画なら、本作を面白いと思うのは100人に1人だろう。
だからこそ、ハマれば一生モノの映画になるはずだ。
※鏡対称である『現代やくざ 血桜三兄弟』や、姉妹編的な要素もある『女番長 感化院脱走』も必見。

・第2位『狂った野獣』(1976)

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作品的には『暴走パニック大激突』の方が上だが、こと渡瀬恒彦の魅力でいえばこちらが上。
グラサン、トレンチ、グレーのスーツ、えんじ色のシャツ、次々と危機に瀕しながら服を脱いでいくにつれ、剥きだしの生命力が増していく。
パクった自転車で暴走バスを追いかけるシーンに渡瀬恒彦の全てが詰まっている。

・第3位『鉄と鉛』(1997)

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90年代以降の演技の基準となった“昼行燈キャラ”の中に、東映時代の“狂犬キャラ”が蘇る。
成瀬正孝とのコンビ芸は息もピッタリで、老いたチンピラが現代的なチンピラを征伐する痛快さ。
特に、2人の美学を解さない佐藤蛾次郎に同時に銃を向けるシーンがたまらない。

・第4位『神様のくれた赤ん坊』(1979)

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役柄的にオイシイのは桃井かおりなんだろうけど、渡瀬恒彦のしょーもない恋人役が良い。
能天気で軽薄でいやしくてスケベ、でも、肝心なところでは人情が出る。
桃井かおりと橋を渡りながら嘯くシーンが大好き。

・第5位『木枯らし紋次郎』(1972)

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ほんの脇役だが、迸る殺気と色悪ぶりは出演作の中でも抜きん出た凶悪さだ。
七歳の幼女を犯して島流しとなり、すがりつく女郎を切り捨て、それを目撃した親子は惨殺。
殺した後の興奮に任せ、日頃罵り合っていたはずの加賀雪絵と船上でまぐわう姿は壮絶。

・第6位『戦国自衛隊』(1979)

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いちいち千葉真一に対して反抗的な言動。平然と仲間を殺し、隊を抜け出して愚連隊を結成。
漁村を虐殺して食料と女を略奪、船の中で輪姦に耽溺する暴走鬼畜集団を作り上げる。
しかし、それらの蛮行の裏には常に千葉真一に対する愛憎がある。何とも愛おしい。

・第7位『時代屋の女房』(1983)

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70年代の狂犬演技を経て、80年代に入ると円熟した魅力を放つようになってくるが、それが結実した1本。
得体のしれない美女である夏目雅子に対する“近所の気の良い兄ちゃん”演技が見事。
猫を抱きながら、夏目雅子の「覗き機関(からくり)」を妄想しているシーンが好き。

・第8位『実録外伝 大阪電撃作戦』(1976)

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中島貞夫イズムに加え、松方弘樹という相方を得て、凄まじく充実したチンピラ哀歌に。
『九州進攻作戦』のダブル淋病同様、疑似ホモ行為は嫌でも男同士のドラマを盛り上げる。
宴会中にグラスを噛み砕くシーンは中島アナーキズムの最高潮。

・第9位『セーラー服と機関銃』(1981)

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父親の様で兄貴の様で恋人の様で…基本的には善人ながらも現役ヤクザの凄味もしっかり醸し出す。
風祭ゆきとの濡れ場によって、薬師丸ひろ子のいる世界とキッチリ線を引いてくれるのが憎い。
隠れMVPである大門正明との関係性も泣かせる。

・第10位『皇帝のいない八月』(1978)

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『戦国自衛隊』の矢野役と表裏一体。大規模な右翼クーデターを引き起こすエリート軍人役。
山本薩夫監督自身のイデオロギー的とは正反対の人物だが、文句無しに格好良い。
思想はテロリズムなのに、熱い演説シーンには思わず心動かされてしまう。


以上10作が自分なりに選んだ渡瀬恒彦の魅力を堪能できる映画作品だ。
勿論、ドラマ作品も含め、これ以外にも良い作品は無数にある。
『仁義なき戦い』『私設銀座警察』『博徒外人部隊』『女番長 感化院脱走』『ジーンズブルース』『唐獅子警察』『事件』『震える舌』『血桜三兄弟』『安藤組外伝 人斬り舎弟』…
ただ、「渡瀬恒彦じゃないと成立しない映画」を重点的に選んだ結果、上記の様になった。

この人が、もうこの世のどこにもいないのだと思うと、すごく悲しい。
もし、この記事を読んだ人で、この中に観ていない作品があったら観てもらいたいと思う。
いちファンとして、それらの作品がより多くの人の目に触れると嬉しい。
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2日程前に「不良番長やらずぶったくり」を観ました。
ハワイまでこの船借りるわー!と元気よく、コミカルに舵をとっていた渡瀬恒彦と今朝の訃報…何だか頭の中では未だに結びつきません。

今回スギノイチさんがランキングして下さった渡瀬恒彦作品も、恥ずかしながらまだ2作くらいしか観たことがないので、観てみたいと思います。

Re: タイトルなし

『不良番長』での渡瀬恒彦は、いつも仲間内の中でも良識派で色男、という位置付けでしたね。
クロスオーバー作品である『極道VS不良番長』では遂に梅宮辰夫の代役を務めるまでになります。
それも若山富三郎との疑似親子的関係がまた良いのですが、今回は泣く泣く省きました。

主演デビューだった渡瀬恒彦も、70年代前半は併映作品(しかも助演)が多く、そういった軽い役ばかりでしたが、本当に溌剌と活力に溢れていて、観ていてエネルギーを感じます。

僕のランキングはほんの一部ですが、少しでも参考になれば幸いです。

No title

神様のくれた赤ん坊が大好きです。泣けます。
木枯らし紋次郎もかなり好きな作品です。他は未見です。
昨日、スギノイチさんのブログで渡瀬恒彦を検索し、自分の好みに合いそうな
「実録 私設銀座警察」「三匹の牝蜂」「ジーンズブルース 明日なき無頼派」
をレンタルしたのでした。
このブログで「鉄砲玉の美学」がずーっと気になっていて
観たかったのですが、なかなか見つからなく諦めていました。が、
有料動画サービスにあるのを発見したので連休中に観る予定です。
やはり私は70年代の渡瀬恒彦が好きなようです。
スギノイチさんのレビューは本当に参考になります!

Re: No title

『戦国自衛隊』や『セーラー服と機関銃』を差し置いて『神様~』と『木枯し紋次郎』とは、ずいぶんマイナーどころを観ているのですね笑。

レンタルされたという3作は今回の記事には載せていませんが、全て渡瀬恒彦の魅力が強く出ています。
特に『ジーンズブルース』の梶芽衣子との恋人の様で姉弟の様でもある関係性は出色です。
また、『三匹の牝蜂』では大原麗子との共演もあります。
既に交際していたのか、これキッカケかは判りませんが、既にお似合いでした。

『鉄砲玉の美学』を楽しんでいただければ、いちファンとして嬉しいです。
僕は70~80年代前半の頃が特に好きです。
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Author:スギノイチ
ゆとり丸出しダメ社会人。
最新映画もそれなりに観ますが、古い映画が好きです。
映画も漫画も好きだけど、音楽の知識はからっきし。

勝新太郎信者、渡瀬恒彦主義者。
よって必然的に東映、大映ファン。
年代で映画を観てるつもりはなかったけど、気が付くと60、70年代の映画ばかり漁っている。

Filmarksもやってます。
https://filmarks.com/users/suprushken

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