『恐山の女』 おしら様の祟り

吉村実子主演の『恐山の女』を観た。
恐山というと青森の有名な霊山だが、その辺はあまり関係なく、「廓モノ」の趣が強かった。
東北の土着神“おしら様”の祟りに触れた売春婦・吉村実子の身に起こる悲劇が描かれる。

“おしら様”というと、『千と千尋の神隠し』に出てくるあの大根みたいな神様だ。
しかし、本作ではあのユルい外見からは想像も出来ぬ苛烈な祟りを発揮している。
通常の廓モノより5割増し。ありえないほどに悲劇しか起こらない。

『恐山の女』(1965)
監督 五所平之助
主演 吉村実子

吉村実子がこんなに不幸なのは、処女を奪った殿山泰司とその息子である寺田農の父子と性交したことで“おしら様”の禁忌に触れてしまったかららしい。
性交する前までも結構不幸だったが、まあこの時代の少女には珍しくない話だろう。
ところが、祟られて以降は不幸は加速し、殿山泰司は腹上死、愛した寺田農は戦死してしまう。
さらに寺田農の兄(川崎敬三)と出会い真実の愛を知り、体を重ねるも、数分後に死亡。
※童貞の寺田農が廓で初体験した後に戦地に赴く展開は、後の『肉弾』の前哨戦のようで興味深い。
川崎敬三の「祟りを反証するために一緒にいる」設定とか、ラブシーンでさえオドロオドロしい音楽が流れたりとか、もう不幸のための御膳立てとしか言えない無理矢理な展開が多く、祟りというか単に吉村実子がサゲマンなだけのような気がしてくる。

ていうか、最期の悲劇に至っては、明らかに“おしら様”ではなく東野英治郎のせいだろう。
「一番怖いのは人間である」という結論だとしたら、祟りありきの無理矢理な展開がチグハグ。

映画の質にはあまり関係ないが、地元民としては下北弁のクオリティも気になる。
台詞中の「し」を全て「ス」と発音するという力技の一点張りなのはちょっと…

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トラウマ痴女映画『ミスター・グッドバーを探して』

ダイアン・キートン主演の『ミスター・グッドバーを探して』を観た。
ジュディス・ロスナーの小説の映画化作品で、聾唖学校に務める美女教師が夜な夜な麻薬とセックスに溺れていく様を描く。

『生きる』の痴女版みたいな話かと思っていたら、どんどんシャレにならない方向にエスカレートしていった。
結構トラウマになりそう。
ていうか、“ミスターグッドバー”って“良き○棒”ってことかいな。

『ミスター・グッドバーを探して』(1977)
監督 リチャード・ブルックス
主演 ダイアン・キートン

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本編中、若き日のリチャード・ギアが当時アル・パチーノと付き合っていたダイアン・キートンに向かって、「パチーノっていいよね」とからかうメタな小ネタがあった。
だからという訳でもないが、アル・パチーノ主演の青春ドラッグ映画『哀しみの街かど』を思い出した。
『哀しみの街かど』も70年代の荒涼としたNYの中でドラッグに逃避するダメな若者が描かれていて、本作と近い物を感じたりもしたが、今思うとあれはまだ救いがあった。
本作のダイアン・キートンは、まあ自業自得ではあるものの、あまりにも悲惨で哀れだ。

昼間の聾唖学校での熱心な教師の姿と、夜の歓楽街での淫乱な振る舞い。
どちらの面も偽りという訳でなく、2つとも主人公の中に存在する苦しみ。
父親への反発やチューズデイ・ウェルド演じる姉の素行不良がとことん悪く作用し、セックスのみならず麻薬に走りだして仕事も碌にできなくなってからはもう見てらない。
中盤までは冗長で退屈してしまうところもあるが、終盤に向けて徐々にヤバい雰囲気になってくる。
トリップやらポルノやら悪夢のような性春にウンザリしてくる頃、もっと最悪な現実が襲い掛かる。
ラストカットはなんかもう夢に出てきそうな怖さ。

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『セックス・ハンター 濡れた標的』 所詮俺たちゃかたつむり!

ちょっと前に観た面白い映画で『セックス・ハンター 濡れた標的』というのがあった。
澤田幸弘監督の日活ロマンポルノだ。

澤田監督はこの前年に『関東幹部会』というやくざ映画を撮っている。
『関東幹部会』もちょっと変な映画だったが、『濡れた標的』はいくら大和屋竺が脚本とはいえ、一体何があったの?というようなアナーキーな映画になっていた。

『セックス・ハンター 濡れた標的』(1972)
監督 澤田幸弘
主演 ジョージ・ハリソン

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護送車から逃げ出し、女を襲おうとしてとっ捕まる混血の青年。画面に向かって吠える顔でタイトルバック。
監獄の中で壁に落書き。血で描いた鳥居の股下にでっかい女性器の画。
「所詮俺たちゃかたつむり!」という三上寛とも頭脳警察ともつかぬ謎のパンクロックが鳴り響く。
いくら70年代とはいえ、どストレートすぎるアナーキズム。

「主人公の妹と友達が米兵に輪姦され、その敵討ちをする」という単純な筋書きだが、いちいち描写がえぐい。
輪姦描写はやたら真に迫り、輪姦後にも複数でリンチして小便をかける米兵達。とことん醜悪だ。
さらに黒人の青年をその辺から拉致してきて、無理やり女を凌辱させる。
白人の徹底した優生思想を糾弾しようというのだろうか、詰め込み過ぎて"過激"が渋滞している。
外人3人はどっから連れてきたのか知らないが、凄まじく演技が下手である。その辺の素人外人じゃないか?
この米兵がベトナム戦争で足を失う回想があるのだが、明らかに地中に足を埋めているのが丸わかり。
よってたかって日本女や黒人をいたぶる米兵も、国家暴力の前には芋虫同前。
理不尽な暴力の連鎖を描こうとしているのだろうが、露悪的かつチープな描写のせいで本来のメッセージ以上に禍々しく思える。

主人公の俳優をこの映画以外で観た事が無いのだが、貧乏くさい顔が役に合っている。
白痴と化した伊佐山ひろ子とのまぐわいはエロさなんか全く無くて、直視していられないほど惨めだ。
ラストの大暴れでとりあえず劇映画の主人公としての体裁を保つのだが、そこでさえもヒーローではない。
むしろ脇役ヤクザの高橋明の方が印象に残るぐらいだ。
エネルギー先行で物凄く粗が多い映画だが、こういうの嫌いになれないなあ。

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強面俳優たちのコメディ・クライム『七人の野獣 血の宣言』

まだ4月とはいえ、今年はいまいちアタリの映画に当たってないが、その中で一番良かったのは何だろうと考えると、ちょっと前にラピュタ阿佐ヶ谷で観た『七人の野獣 血の宣言』かもしれない。

『七人の野獣 血の宣言』(1967)
監督 江崎実生
主演 丹波哲郎

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タイトルの「七人」とは 丹波哲郎、青木義朗、岡田眞澄、高品格、郷えい治、小池朝雄、弓恵子の7人だ。
それぞれ立場も動機もバラバラだが、なし崩し的に強盗計画に加担していく。
全員必要以上にキャラが立っている上に、クライムアクション史上稀にみるチームワークの無さで、団結したと思った傍から、金や女を目にするとすぐに仲間割れをする。
その仲間割れの様子が毎回馬鹿馬鹿しく、しっちゃかめっちゃかで爆笑なのだ。
所謂コメディ俳優ではなく、やくざ映画やアクション映画の主役orボス格の俳優が馬鹿をやるので余計に笑える。
岡田眞澄や小池朝雄がふざけすぎているせいで、丹波哲郎が比較的真面目な役をやらざるを得なくなっているのがまたおかしい。

日活のクレジット的には一番大物のはずの宍戸錠がなかなか出てこないなあと思っていると、まさかのタイミングでの登場。
その登場の仕方自体がギャグなのに、その後の展開もまた良い意味で脱力。
小品ながら、テンポもギャグのキレもかなり良い逸品だった。
DVD出てないの勿体ないな。

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キャスト残酷番付『鬼輪番』

新作・旧作を問わず、今年はどうもあまり良い映画に巡り合えていないが、いまんとこ一番高かった買い物は1万円ぐらいした『鬼輪番』の海外DVDだ。
小池一夫の同名劇画を原作とするエログロ&スプラッタ時代劇だ。

東映実録路線やら日活ロマンポルノに負けまいと、東宝が繰り出したキワモノ漫画の映画化シリーズ。
『銭ゲバ』『子連れ狼』『御用牙』『混血児リカ』『高校生無頼控』等、東宝らしからぬ非道徳的内容がてんこ盛りの作品群だが、この『鬼輪番』はその中でもマイナーな部類だろう。
不思議なもので、作品の面白さもしっかりと下位に位置していた。

『鬼輪番』(1974)
監督 坪島孝
主演 近藤正臣

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序盤は悪くない。凄惨で非道な忍者の世界が、エログロ演出全開に描かれている。
鬼の面を付けた男女がまぐわいまくるアングラな儀式から、人体破壊や血飛沫ありまくりのスプラッタな殺陣、鬼の頭領が仮面ごと自分の面の皮を削ぎ落すシーンに至るまで文句のつけようがないぐらいぶっ飛んでいる。
しかし、そこからラストまでは東映集団時代劇を退屈にした様な平坦な展開が続く。エログロもあまりない。
どうせストーリーはチンケなのだから、せめてエログロを頑張ってくれないと困る。

忍者モノらしく次々と人が死んでいくのだが、次に誰が死ぬか予想出来るのも興味を削がれる。
主要なキャストは、近藤正臣、水谷豊、峰岸徹、高峰圭二。
この4人の忍者とヒロインのくのいちが過酷な任務に挑んでいくのだが、見事なまでにキャストの格順で死ぬ。
案の定、真っ先に罠にかかった高峰圭二が「俺は一体何のために生まれてきたんだ…」と言って絶命するシーンは色んな意味で泣ける名シーンだ。
最期にだれが生き残るのかはネタバレするまでも無いだろうし、特に目を引くエログロがあるわけでもないのだが、岸田森演じる怪僧は一見の価値アリ。
不相応なプレミアが付いてしまっている海外DVDだが、お金持ちの岸田森ファンは購入してみても良いだろう。

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Author:スギノイチ
ゆとり丸出しダメ社会人。
最新映画もそれなりに観ますが、古い映画が好きです。
映画も漫画も好きだけど、音楽の知識はからっきし。

勝新太郎信者、渡瀬恒彦主義者。
よって必然的に東映、大映ファン。
年代で映画を観てるつもりはなかったけど、気が付くと60、70年代の映画ばかり漁っている。

Filmarksもやってます。
https://filmarks.com/users/suprushken

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